DEI見直したマクドナルドの言い分は?

 ロイター通信やブルームバーグ、英BBCなどの報道によると、2024年から2025年にかけ、通販大手のアマゾン・ドット・コム、自動車のフォード・モーター、二輪車のハーレー・ダビッドソン、航空機製造のボーイング、ビール大手のモルソン・クアーズ、大手量販店のウォルマートといった有名企業が次々と多少正目標の終了や縮小を表明しました。

図:フロントラインプレス作成

 このうち、ウォルマートは2024年11月、従業員向けの人種平等研修を終了し、性的少数者団体の平等性評価調査に参加することも中止すると発表しました。性的少数者らが参加するプライド・パレードなどへの資金援助も見直す方針です。

 日本でもなじみ深い外食大手のマクドナルドもDEIから後退した企業の1つです。同社は2025年1月6日、多様性の目標設定や取引先に求めていたDEIに関する誓約を取りやめると発表。管理職に占める女性比率を45%、人種・性的少数者の比率を35%に引き上げるといった目標を白紙にしました。

 同社の声明では、DEIへの取り組みは今後も変わらないとしたものの、DEIを担う部署の名称を「ダイバーシティチーム」から「グローバル・インクルージョン・チーム」に変更するなど、これまでの取り組みを大きく後退させました。

 ところが、米国の保守系グループ「米国平等権利同盟」はその1週間後、マクドナルドが運営しているヒスパニック系学生向けの奨学金制度は他の学生への「逆差別」だとして提訴しました。

 この奨学金は、両親のどちらかがヒスパニックかラテン系であれば、大学生に最高10万ドル(約1500万円)を支給するものですが、この保守系グループは「経済的に厳しい状況にある者はヒスパニックやラテン系だけではない。この奨学金制度は他の人種を排除している」と主張。人種による枠を設けるのではなく、「経済的に恵まれないすべての高校生に門戸が開かれるべきだ」としています。

 マイノリティに対する優遇措置を「逆差別だ」とする動きに大きな影響を与えたのは、2023年9月の米連邦最高裁の判決です。この訴訟は、ハーバード大学とノースカロライナ大学の選抜をめぐってアジア系学生らの団体が「アジア系が差別され、合格率が不当に低くなっている」と訴えたもので、積極的な差別是正措置の是非が大きな争点でした。その判決で、連邦最高裁は「人種だけを理由に優遇することは憲法違反」とする歴史的な判決を下したのです。

 それまで米国の大学では、学生の多様性を確保するため、黒人やヒスパニックを優遇するケースが多かったのですが、この最高裁判決を境に流れは逆転。大学だけでなく、優遇措置を講じていた企業にも大きな影響を与えました。