1970年代以降、MLBは経済不振に陥ったが、1984年のロサンゼルスオリンピックを経済的な成功に導いたビジネスマンのピーター・ユベロスを招聘するために、ビジネスに関する権限をコミッショナーに集中させた。ユベロスコミッショナーは、経済的な立て直しに成功。以後、歴代のMLBコミッショナーには、敏腕ビジネスマンが選ばれ、「トップセールスマン」として、MLBの利益の拡大を目指している。
各球団の事情が優先するNPB
これに対して、NPBは、球団個々のビジネスが優先する形態となっている。1950年の2リーグ分立以前は、試合の入場料は、いったん連盟事務局に納められ、手数料を差し引いて各球団に入金されていた。連盟事務局は「入場料の分配権」を通じて球団を統治していたのだが、1950年の2リーグ分立後は、入場料などの収益は直接球団に入ることとなった。この年に設置されたコミッショナー事務局は、各球団から支払われる「年会費」で維持されることとなり、球団と連盟、コミッショナーの力関係は逆転した。
NPBでは、入場料収入、球場内の物販飲食、広告掲載などによるスポンサーシップ、マークや画像に関するマーチャンダイジングなど、すべてのビジネスを個別球団が手掛けている。NPB機構はオールスター戦、日本シリーズの主催権などがあるだけだ。
コミッショナーには、法曹界、官界、実業界などで功績を挙げた著名人が就任するが、高齢者が多く、非常勤であり、プロ野球界のガバナンスやビジネス面で、手腕を振るうことはほとんどない。
コミッショナーがビジネス上の大きな権限を有するMLBと、各球団がバラバラにビジネスをするNPB、この違いが、現在のNPBとMLBの「経済格差」の最大の原因だ。