日本のプロ野球球団、企業としては中小企業

 たとえば、放映権ビジネス。MLBではコミッショナーが先頭に立って、巨大な放送局や世界的なインターネットメディアと交渉する。コミッショナー側は、全30球団のペナントレース2430試合について、長期的な契約を結ぼうとする。メディア側もそれに応じて大型契約を提示する。MLBの放映権収入は年間19.6億ドル(2270億円)にもなる。

 同様にマーチャンダイジングやスポンサーシップでも巨額の契約を結んでいる。

 こうしてコミッショナー事務局に入った巨大な収益は、全30球団に分配される。各球団は自身のローカルビジネスに加えて、コミッショナー事務局からの分配金で維持されている。球団が経営危機に陥った際には、コミッショナー事務局が一時的に球団経営を代行することもある。

 NPBの場合、放映権は、球団が個別に放送局と交渉する。売り物は年間71~2試合の主催試合だけだ。そしてプロ野球チームは企業としては年商2~300億円の「中小企業」だから、大企業のメディアとは力関係で劣勢にならざるを得ない。

 マーチャンダイジングやスポンサーシップでも、個別の球団単位のビジネスになるので小スケールになることが多い。昔から取引のある地元の中小企業と契約することも多い。

 1個のチームが契約するのと、リーグ、機構全体が契約するのでは、どれだけスケール感が違ってくるのかを示す好例が「DAZNとの契約」だ。

 世界的なスポーツ専門ビデオオンデマンドサービスであるDAZNは、ここ10年、日本のプロスポーツ界にアプローチするようになった。

 サッカーのJリーグは、設立時から、MLBに倣ってチェアマンが率いるJリーグ事務局がビッグビジネスを担っている。

 DAZNとの契約も、Jリーグ機構とDAZNとの間で行われ、J1からJ3まで全クラブの全試合を対象として、2017年から10年2100億円の放送権契約が結ばれた。さらに、2023年には契約が延長され、2033年までの11年間で約2395億円の契約となった。

 Jリーグ機構には毎年200億円以上の放送権収入が入ってくる。これはJ1~J3の各クラブに分配される。2020年に起こった「新型コロナ禍」では、経営難に陥ったクラブがあったが、Jリーグは潤沢な資金力を背景に、これをサポートした。