記者会見で入国禁止令について聞かれた安倍首相は、「内政問題である」として、コメントを控えた。この大統領令は、トランプ大統領にとって、ある意味、一丁目一番地の公約であり、コメントを控えたのは仕方がないことであったと思う。

 だがこの対応は、当該国や他国からの批判が安倍首相に向けられるというリスクも背負ったことになる。

 蜜月関係が「率直に物を言えぬ関係」になってはならない。トランプ大統領の政策内容によっては、時にはたしなめることも必要な場面もあるかもしれない。世界の信頼を得るために、安倍首相はその責任も果たしていかなければならない重責を担ったということでもある。

共同声明に使われた「核」という言葉

 防衛相幹部が、安全保障分野は「満額回答」だったと評価したという。

 確かに共同声明では、「核および通常戦力の双方による、あらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない」と明記され、さらに、「両首脳は、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを確認した。両首脳は、同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」ことが明記された。

 共同声明で「核および通常戦力の双方による・・・日本の防衛」と表現するのは、核の傘を含む「拡大抑止」という考え方の表明である。「拡大抑止」とは、同盟国が攻撃を受けた際にも報復する意図を示すことで、同盟国を他国の攻撃から守るという考え方である。この点は、マティス国防長官が2月初頭に来日した際にも、同様の考え方を表明していた。

 2月12日付産経新聞によれば、共同声明で「核」という表現が入ったのは、1975年の三木武夫首相とフォード大統領の共同文書以来だという。北朝鮮の核・ミサイル開発が顕在化してからは初めてのことであり、北朝鮮の動向を念頭に置いた声明だと報じている。