トランプ新政権発足、最優先課題はグリーンランドよりロシアと中国
6月までに米ロ首脳会談、中国には関税と軍事力ちらつかせ取引へ
2025.1.18(土)
高濱 賛
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実現しないのは幸い、就任前の石破首相面会
就任式の翌日、同式に出席する岩屋毅外相、ルビオ国務長官ら日米豪印によるクワッド外相会議が行われる。
トランプ政権後、初のインド太平洋地域の安全保障・経済連合体の会合だ。当然、「中国の影」が投影されている。
日米関係はどうか。
安倍晋三元首相の「電撃面会」の再現を狙った石破茂首相の目論見は外れ、就任後、しばらくしての日米首脳会談になる。
トランプ周辺では、こんな見方が流れているようだ。
「安倍氏の時と違ってトランプ氏はすでに大統領経験者。自民党内の力学や石破政権誕生前後の経緯も知っており、日本に対するアジェンダを組み立て、石破氏に会う方が賢明との判断だ」
「トランプ氏の日本に対する基本姿勢は、8年前、安倍氏との首脳会談で述べた『日米軍事同盟とは究極的には敵が突き崩せない(Impenetrable)ものにすることだ』という発言に尽きる」
「それが日本のためでありアメリカ第一主義にもかなうものだからだ」
「そうしたコンテキストの中でトランプ氏は在日米軍駐留費や防衛予算、貿易不均衡の問題を石破氏にストレートにぶつけてくるだろう」
パモナ大学のトム・リー助教のような日本専門家もいる。
「日米関係に関するNatural Alliance Myth(ナチュラルな同盟という神話)を暴くこともトランプ氏にはありうる」
日本は、2027年までには防衛予算をGDP(国民総生産)の2%にすると決めているが、それを3%、4%に引き上げるよう要求してくるとも限らない。
トランプ氏にとっての日米同盟は、やはりディール(取引)なのである。それはまだアジェンダになっていないだけなのだ。
(Trump’s return debunks the natural alliances myth | East Asia Forum)
メディアは、トランプ氏のパナマ運河管理権奪回、グリーンランド買収、カナダ併合といったショッキングな発言ばかりに目を奪われているが、それらはトランプ氏にとっては枝葉の話。
本題は、まず米国民にとっては、「ブランク・チェック」(金額欄が空白の小切手)のように切ってきたウクライナへの軍事支援を止めるための米ロ交渉だし、そして依然として集中豪雨のように入ってくる中国製品、サイバー攻撃、スパイ活動をストップさせるための対中交渉が優先順位の高いアジェンダであることだけは認識すべきだろう。
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