「HIVの感染拡大に近い」

「性器に病変が集中する男性患者2人はどちらも鉱山労働者だったが、2人とも数カ月性交渉をしていないと主張した。『男性は恥を感じやすく、道徳観も働くのか、真実を隠す傾向がある』と医師のグレイス・カミフラ氏は言う。男性患者の8割ほどは感染経路について本当のことを話さない」

 このレポートでは、外部の専門家が知ったかぶりをして、現場の意見を聞かずに教科書的な対応を取るという、首都キンシャサのエムポックス研究者、プラシデ・ンバラ氏の声も紹介している。

 現場で起きているのは、性行為による拡大であり、これが大きな問題になっていることが論文報告されている。それが家庭に持ち込まれ、母子感染を起こしたり、密集して暮らす同居人の間に接触感染したりしているという状況と見られる。刑務所や難民キャンプでも広がっているが、それらは接触感染が起きているのだろう。

 サイエンスの指摘でもう一つ気になるのは、震源地となったカミトゥガでの流行は治まりつつあるが、周囲の北キヴ州や南キヴ州の他の集落などでは感染を抑えられていないこと。さらに、キンシャサへとクレード1bが広がっていることだ。

 震源地から、クレード1bが移動していることになる。キンシャサでは主に性感染症で広がっていると考えられている。キンシャサは首都であり、これはアフリカ域外へのハブにもなる地域だ。エムポックスが大都市へと迫りつつあるのは脅威である。

 こうした動きについて、サイエンスは過去のHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染拡大に近いと警告を発している。また、エムポックスが、他の動物に広がることにも注意を促している。

 実際、新型コロナウイルスは北米ではオジロジカに定着したと紹介する。エムポックスはいまだに自然界の宿主が特定されていないが、アフリカ域外も含めて野生動物に定着すれば根絶は困難になるだろう。