初めての客は冷たくされた吉原「遊女屋」のシステム
遊女屋の構造を説明すると、2階が遊女と客の部屋で、1階には従業員たちが使用するさまざまなスペースが確保されていた。
まず、表通りに面して張見世(はりみせ)という遊女たちが座る場所がある。男たちはそれを眺めて相手を誰にするかを決めることになる。
入り口には客に遊女の名前を伝えたり、客を取り次いだりする店番が座る台が置かれている。そこを通って暖簾をくぐると、井戸とかまどが置かれた土間があり、そこから一段上がったところの台所で、客や働く遊女の食事が作られた。
台所の隣には、遊郭の経営者である楼主が妻と過ごす「内所(ないしょ)」と呼ばれる部屋がある。吉原では刀を持ち込むことができないため、内所に備えられた刀掛で刀を預かることになっている。
今回の放送では、重三郎が茶屋を訪れた中村隼人演じる長谷川平蔵から刀を預かろうとして、付き人から抵抗されると、こう説明する場面があった。
「吉原には決まりがございまして、いかなるお方といえでも、店に上がるときには、刀をお預かりすることになっております」
まさにその通りなのだが、長谷川平蔵らは吉原が初めてにもかかわらず、自分たちも特別扱いされることを望み、いろいろとゴネている。
しかし、実際の吉原では、初めての客のことを「初回」と呼び、対応はもっと冷淡だった。高級遊女となれば、いきなり一夜を共にしないのはもちろんのこと、飲食を共にすることさえなかった。せいぜい「はい」と「いいえ」と受け答えするくらいのものだったという。
そして、二度目に訪れたときに祝儀を渡すと酒を酌み交わせるようになり、三度目でようやく「馴染」として、遊女の部屋に通されることになる。
ドラマでの長谷川平蔵らの振る舞いは、そんな吉原の慣習からしてもやはり非常識だったようだ。そのうえ、小芝風花が演じる花の井と、どうしても一夜を共にしたい、と言い出したのだから、あきれたものである。