メディア業界で浮き彫りになったひどい人権侵害

2.「ビジネスと人権」で周回遅れのメディア・エンターテインメント業界

 近年、日本ではメディア・エンターテインメント業界での人権意識の低さが浮き彫りになった。元タレントが告発し、英BBCが報道したことで大きな話題を呼んだ大手芸能事務所での性加害問題は象徴的な一例だろう。

 作業部会の会見では「日本のメディア企業は数十年にもわたり、この不祥事のもみ消しに加担した」とのコメントもあり、芸能事務所だけでなくそれを取り巻くメディア業界の責任にも光が当てられることとなった。

数々のスキャンダルもみ消したジャニーズの剛腕、故メリー喜多川はいかにしてメディアを支配したのか?(JBpress)
ジャニー喜多川が顔を真っ赤にして逃げ出したあの日の記憶(JBpress)
事実上の解体へ、ジャニーズ性加害を最初に暴いた村西とおると北公次の証言(JBpress)

 さらに、2024年に公表された作業部会の「訪日調査報告書」では、メディア・エンターテインメント業界全般について、女性のジャーナリストや俳優に対するセクハラ、アニメーターの低賃金や長時間労働などの問題を指摘しており、国際的にも厳しい目が向けられている。

「コンテンツ内での差別的な表現」にも注意が必要だ。

 2024年に人気バンドMrs. GREEN APPLE(ミセス・グリーン・アップル)のMVに「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現が含まれていた」として、動画の公開が停止されたことは記憶に新しい。

 公開停止となったMVは、コロンブスに扮したメンバーの一行が南の島を“発見”するなど、植民地主義や奴隷制を想起させるような内容であったため、「植民地主義を肯定している」「人種差別をエンタメ化している」といった批判の声が国内外から次々に上がった。

ミセスのMV公開停止が浮き彫りにした、コンテンツのグローバル化に抜け落ちている視点(JBpress)

 本件に限らず、日本のコンテンツが国際的な人権感覚からすると「ずれている」と捉えられるケースは少なくない。

 既に国内の主要テレビ局で新たに人権方針を策定するなどの動きが出てきているが、今後こうした取り組みが一時的なものに終わらず継続的なものとなっていくかがますます注目される。