海外でルールづくりが進む子どものプライバシー保護
3.オンラインビジネスでますます留意すべき「子ども」の人権
人権対応を進める上で欠かせない視点の一つが、「誰の」人権が侵害されるかだ。特に権利を持つ主体(ビジネスと人権の世界では「ライツホルダー」と呼称する)が弱い立場にあるほど、被害を受けた時に声を上げたり行動したりすることが難しく、深刻な影響が及ぶことが想定される。
ここでは近年のルール・社会動向も踏まえ「子ども」の人権に注目したい。
従来から、玩具・アパレルメーカーなど子どもを対象にしてきた企業では、安全面などで「子ども」の人権を意識する機会もあっただろう。一方、近年では、例えば写真・動画投稿やチャット機能を持つSNSアプリなどのオンラインサービスを子どもが利用する機会が増えており、その中で懸念される人権リスクもある。
一例は子どものプライバシー保護だ。海外では先行してルール作りが進んでいる。
米国では2024年に、17歳未満の子ども向けにオンラインサービスを提供する企業に対して、製品などを設計する際に子どもの被害を防止・軽減するための「合理的な措置」を講じることを義務付ける法律(Kids Online Safety Act)や、17歳未満の子どもから同意なしに個人情報を収集することを禁止する法律(Kids Online Privacy Act)が次々と整備された。
日本政府も、2024年にスマートフォンアプリを手掛ける事業者向けの指針を改訂して、子ども向けにやさしく書かれた個人情報規約の作成を求める方針を示している。
子どものプライバシー侵害は、最悪のケースでは児童買春や児童ポルノなどの悪質な犯罪につながるケースもある。各国政府もこうした深刻度の高さを認識して対応を急いでいる形だ。
もちろん、SNSを通じて、これまでになかったつながりやアウトプットの機会を得るなど、従来なかったオンラインサービスで子どもが受ける恩恵が大きいのも事実だ。
一方、今後企業は個人情報漏洩に限らず、誹謗中傷や依存など、子どもがサービスを利用する際に起こり得る様々な人権リスクを想定し、例えば保護者の事前同意や確認、NGワードの検知などの仕組みを通じてそれらを防止・是正していくことが求められる。