ユダヤの抽象的思考は禅にも通ずる

 このように抽象の世界、絶対無・完全空の世界を徹底的に追求するユダヤ教は、禅宗の教えに近いといえる。

 京都市にある臨済宗の龍安寺石庭は、無を象徴するもので、スティーブ・ジョブズがiPhoneを構想した場所として有名であるが、禅宗は絶対抽象の世界における人間思考の深化を求める宗教である点において、同じく偶像崇拝をいっさい禁止するユダヤ教やイスラム教とも共通する。

◎スティーブ・ジョブズがiPhoneを構想した場所として知られる龍安寺石庭(写真:共同通信社)スティーブ・ジョブズがiPhoneを構想した場所として知られる龍安寺石庭(写真:共同通信社)

 徹底した抽象的思考を叩き込まれるユダヤ人は、学問の分野で、抽象的な思考が要求される分野で、他の民族よりも力を発揮する。世界人口のごくごくわずかな割合しか占めないユダヤ人が、ノーベル賞、なかんずく経済学賞を多く受賞しているというのも、この抽象思考の深化を強く求める宗教の所以である、ともいわれている。