今後の利上げを占う「中立金利」の現在値

 0.75%から先の利上げは、中立金利との比較考量が必要になる。

 今年8月に公表されたワーキングペーパー「自然利子率の計測をめぐる近年の動向」では、概して「▲1.0%~+0.5%」が足許の自然利子率イメージとして示された(図表②)。

 インフレ率 2%を前提とすれば、中立金利(≒自然利子率+インフレ率)は「+1.0%~+2.5%」ということになる。現在入手可能な情報に基づき、最も保守的(ハト派的)な中立金利の想定が1%という言い方もできる。

【図表②】


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 この中立金利1%説は、市場ではコンセンサスに近いもののように思われている節もあるが、ここで「本当にインフレ率2%を前提とすべきか」という点を熟慮する必要はある。というのも、仮にインフレ率1.5%ならば中立金利は「+0.5%~+2.0%」、1.0%ならば「+0%~+1.5%」と変動するからだ。

 現状のCPI(消費者物価指数)は確かに安定的に2%で推移しているが、これを「円安による一時的な伸び幅」と整理すれば、0%や0.5%が中立金利であるという考え方もある。このような想定に立つと、既に「現状が中立金利」という話になる。

 これは弱気過ぎる想定としても、日本のインフレ率が2%弱でアンカーされているとすれば、中立金利が0.75%という考え方はあり得る。