2025年1〜3月までは円高を拾うチャンス
ここで実現された値上げ部分は企業部門か家計部門か、いずれかに帰属する。経済分析の観点では、企業部門であれば営業余剰(UP:Unit Profit)として、家計部門であれば単位労働コスト(ULC:Unit Labor Cost)として解釈することになる。
2022年4~6月以降のGDPデフレーターの前期比変化率の累積は約21%ポイントだが、同じ期間のUPの累積は約15%ポイントだった(前ページ図表①)。すなわち、今回の円安局面の値上げで得られた収益の7割程度が企業部門に分配され、3割程度が家計部門に分配されたということだ。
2023年後半以降、ULCへの分配が漸増する兆しはあるが、値上げ部分の大きさを踏まえると十分という印象もない。2024年の春闘に象徴される賃上げ機運は、「2022年以降の値上げを還元した結果」と整理できなくもない。2025年も、同じような文脈で企業(UP)から家計(ULC)への還元が持続するのではないか。
こうした認識の下、3月や4月に「歴史的な賃上げ幅」が騒がれる中で、日銀による追加利上げという決断があっても全く不思議ではない。
まずは、12月ないし1月に利上げを行い、3月ないし4月に追加利上げというのが現時点のメインシナリオだ。この時点で政策金利は0.75%まで引き上げられる。
筆者は今後1年のドル/円相場見通しに関し、2025年1~3月期までは円高を拾うチャンスがあると考えているが、これは円金利の面からドル/円相場が下押しされる展開を想定しているためだ。逆に、4~6月以降はFRBの「利下げの終わり」が注目されやすくなるため、押し目は徐々に少なくなると予想する。