「そのバット材の卸先が、今、僕がいる野球用のバットの専門メーカーの株式会社白惣だったんです。カナダでのバット作りの修行が終わって、誘いもあったので入社することにしました。今から8年前ですね。

 株式会社白惣は、自社ブランドのバットも一部作っていますが、大部分はOEMです。でも材料の保有数もバットの生産量も日本一です」

業界最大のOEMメーカー

 ここで日本の野球バット産業の歴史に触れておこう。1872年にお雇い外国人ホーレス・ウィルソンによってもたらされた野球だが、バットの国内生産は1900年頃に始まり明治の終わり(1912年頃)には2万本程度が出荷されていた。その後大学野球や甲子園大会などで野球ブームが訪れ、1932年には40万本も作られていた。

 戦後、プロ野球人気の高まりとともに、バットの生産量は飛躍的に高まり、1966年には350万本に達したと言う。

 しかし1974年、高校野球が用具代の軽減を目的として金属バットを導入すると、木製バットの生産量は激減し35万本台となる。以後も30万本前後で推移している。

 原材料は、戦前は主として北海道産のトネリコが使用されたが、国産のアオダモ・ヤチダモ・ホオノキを使った時代を経て、今は北米産のシュガーメイプル、中国産メープルが主流で、一部、北海道産イタヤカエデも使われている。

半ば成形されたプロ用バット(筆者撮影)
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 大手メーカーを除いて野球用品の多くは、OEMで生産されている。メーカーがアドバイザリースタッフとしてプロ野球選手と契約、その選手モデルのグローブやバットなど用具のデザイン、仕様が決まると、多くのメーカーがそれをOEMとして下請けメーカーに発注している。株式会社白惣は、木製バット業界で最大のOEMメーカーなのだ。