現在のバット市場はまことに複雑だ。プロ、社会人の大部分、大学野球、独立リーグは木製のバットを使っている。この市場には既存メーカーが深く入り込んでいる。NPBのスター選手はアドバイザリースタッフとしてバットを無償で提供されている。それ以外の選手も既存メーカーのバットを購入している。

 高校の硬式野球部は大部分は、日本高野連が定めた基準の金属バットを使用している。中学生、小学生も、硬式、軟式ともに金属バットが主流だ。

 ただ、高校の硬式野球では、跳びすぎる金属バットの危険性が指摘され、今年から反発係数を抑えた新しい金属バットを導入した。

変化してきた“バット市場”

 すると「金属バットと木製バットの反発係数がそれほど違わないのなら、今から木製バットを使う方がいい」という選手が出始めた。それに新規格の金属バットは1本3.7万円以上と高額だ。ならば価格が半分以下の木製バットの方がいいという声もある。

千葉商大付属高選手は、HAKUSOHのダケカンバ製バットは軽くて振りやすいと話した(筆者撮影)
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 逆に、軟式野球は木製バットが「飛ばなさすぎる」ために、全日本軟式野球連盟がメーカーに依頼して「飛ぶ金属バット」を開発した。メーカーは技術開発をさらに進め、軟式でも飛距離が出るFRPなど新素材のバットが開発された。

 草野球では「飛びすぎるバット」は大人気だが、こうした新素材バットで「嵩増し」され打球速度が上がった野球は、子どもにとって危険な上に、硬式野球に進んだ時に、ギャップが大きい。それに新素材バットは金属バット以上に高価だ。そこで一部の軟式野球関係者は木製バットへの回帰を考え始めている。

HAKUSOHバットを使った軟式野球大会(筆者撮影)
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 松本氏にとっては、こうした野球バット市場の変化が、ビジネスチャンスにつながっていく。