政府債務と公債(国債)利回りの関係とは?
たとえば、17世紀のオランダは、経済的な覇権が衰退期に差し掛かり、政府債務が拡大したものの、低金利が続いている。オランダの場合は、消費よりも貯蓄を指向する国民の倹約性向、通商による膨大な利益獲得(膨大な累積経常黒字)、政治と経済が融合し官民一体となった政策運営、そして政府資金調達のための効果的な機構(永久年金債)が存在していたのが、低金利が継続した理由として挙げられる。
19世紀初頭にかけての英国でも、政府債務悪化と低金利が共存している。対仏戦争などの軍事費負担増などが英国債残高を拡大させたが、国債利回りは低位で安定していたのである。
当時の英国は、人口増加率が上昇し、一人当たりの政府債務負担が減少したという要因も考えられよう。また金本位制が維持されて通貨価値が保たれていたため、海外投資家からの英国債投資を減退させることはなかったのである。
このような事例はあるものの、注意しなければいけないのは、現代の世界中の多くの先進国の状況は異なるという点である。潤沢な資金が国債市場に流入する仕組みが円滑に機能しているとは限らず、人口増加率も低下しているため、楽観的な状況にあるとは言えない。つまり、現代は、政府債務の累増と低金利の共存を前提にすべきではないだろう。
この英国の事例を確認するために、産業革命が米国や欧州の一部に浸透していった19世紀以降の国債利回りの推移を図2に示した。
最低金利国の地位は、英国が19世紀後半まで保っていたものの、その地位を米国に譲り、20世紀後半から21世紀にかけては、日本やスイスが最低金利国に転じている。いずれの国も経済成長に伴い蓄積した資金を活かして、自国内の政府や企業の資金不足を満たすだけでなく、さらに他地域へと資本輸出を推進したのである。