7月31日、政策決定会合を受けて記者会見する植田和男・日本銀行総裁(写真:共同通信社)

 日本銀行が、2024年7月末の政策決定会合において、国債の買い入れ減額を決定した。これまで、異次元金融緩和の掛け声のもとに積み上げられてきた国債が、本格的に減少することになる。多くの市場参加者の声を聴いた上で、四半期ごとに4000億円ずつ月間の長期国債買い入れ予定額を減額していくというものだ。

 2024年7月の買入額が5.7兆円であるため、7四半期(0.4兆円×7回=2.8兆円減額)を経て、2026年1~3月期には2.9兆円まで買入額が減額されることになる。それでは、今後、誰が代わりに国債を保有するようになるのだろうか?

(平山 賢一:東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)

毎年、数十兆単位で残高を減らしていくことに

「買い入れ予定額の減額」という表現が込み入って理解しにくいので、手っ取り早く表現すれば、600兆円近い長期国債を20カ月後に7~8%程度(40兆円超)減額するということだ。

 異次元金融緩和が実施される前の2012年度末に日本銀行の国債保有残高が72兆円だったことから考えれば、緩やかな減額ペースということになる。主要中央銀行は、すでに国債減額を進めているだけに、慎重に時期を模索した結果の判断と言えよう。

 しかし、日本銀行は、世の中に存在する日本国債・財投債残高の約53%を保有している。その規模の大きさは、今後の国債管理政策を考える上で、大きな問題であるのは間違いない。2012年の国債保有シェアは12%に過ぎなかったものの、異次元金融緩和政策により積極的な国債購入を進めたため、過半を占めるまでに拡大したのである。

 株式市場でも、一つの企業の株式を集中して一人の株主が保有している状況は懸念材料とされる。なぜならこの大株主が売却し始めると、買い手が不在の中、株価が大幅に下落するからだ。

 さすがに、政府が発行する国債だけに、同じように一人の投資家(=日本銀行)が大量に保有しているという課題について、政府は対応策を講じようとするはず。最大投資家である日本銀行が、数十兆単位で毎年残高を減らしていくだけに、その代わりになる投資家を開拓しなければいけない。

 日本国債の所有構成の多様化・分散化は、喫緊の課題と言える。それに際し、以下では、対応策の前提となる日本国債の歴史を振り返って確認しておきたい。果たして、日本国債の所有者構成比率は、どのように推移してきたのであろうか?