国債利回り2%割れは格差社会に対する警鐘か?

 仮に国債利回りの2%割れが常態化するとすれば、それは、数百年にわたる経済の仕組みのチェンジを意味するかもしれない。われわれは、なかなか手に入らない「資本」には、その見返りに金利や配当が支払われるのが当たり前と考えてきたが、この常識が揺らぎ始めたのである。

 言葉を変えれば、金利の累増を通して資本をもつ人々とそれ以外の人々との格差が拡大するデメリットがクローズアップされていると言ってもよいだろう。

 中世以前の欧州では、金利の徴収そのものがネガティブに捉えられてきた。金利の徴収は、資本をもつ一握りの人々と多くの市民と格差を拡大させ、一つには社会の安定を損なうため、禁止されてからである。

 つまり、21世紀初頭に発生したマイナス金利やゼロ金利は、グローバルに拡大する格差社会に対する警鐘を鳴らす現象だったのかもしれない。

※本稿は筆者個人の見解です。実際の投資に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。YouTubeで動画シリーズ「ハートで感じる資産形成」(外部サイト)も公開しています。

平山 賢一(ひらやま・けんいち) 東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト
1966年生まれ。資産運用会社を経て、1997年東京海上火災保険(現:東京海上日動火災保険)に入社。2001年東京海上アセットマネジメントに転籍、チーフファンドマネージャー、執行役員運用本部長を務め、2022年より現職。メディア出演のほか、レポート・著書などを多数執筆。主著に『戦前・戦時期の金融市場 1940年代化する国債・株式マーケット』(日本経済新聞出版)、『金利の歴史』(中央経済社)、『物価の歴史』(中央経済社)などがある。

著者の近著『金利の歴史』(平山賢一著、中央経済社)