政権末期の大統領が重大決断
バイデン政権は、11月17日、ウクライナに長距離ミサイルの使用を許可した。それは、戦争を拡大させる危険性を孕んでいる。政権末期にこのような決定を下すこともまた、大統領制の問題点である。
アメリカ政府は、北朝鮮の兵士がロシア軍に参加したために、それへの対抗措置としている。しかし、射程300kmのATACMSがロシアを敗北させ、停戦につながるわけではない。巨大な軍事力、核兵器、資源を有するロシアは容易には負けない。
トランプは、大統領に就任したら24時間以内に戦争を終わらせると豪語している。その前に、去りゆく今のバイデン政権は、少しでもウクライナに有利な軍事状況を作り出そうというのである。
プーチン大統領は、欧米を牽制するために、核兵器の使用基準を引き下げた。これが、直ちに実行されるわけではないが、第三次世界大戦につながる危険な要素であることは間違いない。
イギリスもまた、射程250kmのストームシャドーの使用を許可し、すでにウクライナは使用したという。
ウクライナは、21日、アストラハン州からドニプロに向けてロシアがICBMを発射したと発表した。しかし、プーチンは、この発表を否定し、ICBMではなく、新型の中距離弾道ミサイルであると述べた。新開発の「オレシュニク」という名の極超音速中距離弾道ミサイルで、報復と実験を兼ねたものだったという。
発射前にロシアからアメリカに通告があり、アメリカ側も中距離弾道ミサイルであることを確認している。
国際法違反のロシアに対して、大統領制のアメリカの最近の対応は必ずしも適切ではない。モンテスキューやマディソンの求めた三権分立という理想は、あまりにも大きな代償を伴っているのではなかろうか。