「100年ローン」まで登場したバブル期の恐ろしい末路
だが、いいことばかりではない。前出の【図表2】にあるように、返済期間を長くすれば、確かにその分毎月返済額は減少するが、反対に完済までの総返済額は増加する。
例えば借入額5000万円当たりの総返済額は、35年返済だと5927万9640円なのが、50年返済だと6355万7400円となり、427万7760円も増えてしまうのだ。
しかも、返済期間が長くなると、ローン残高の減り方が遅くなるという問題もある。【図表4】にあるように、35年返済なら10年後の残高は3745万円だが、50年返済だと4189万円も残っている。何も手を打たないとリタイア後もローンが残り、苦しい思いをすることになりかねない。
そして、もう一つ恐ろしい事態も頭に入れておいた方がいいかもしれない。今のところ、マンション価格を中心に、住宅価格の高騰が続いているので、5年後、10年後も上がり続けていくだろうと考えがちだが、経済環境の激変などによって、住宅価格の暴落が起こった場合、50年ローンは35年ローンより深刻な事態に陥る。
前述したように、残高の減り方が遅いので、資産価値が低下すると売却可能額がローン残高を下回る、いわゆる“担保割れ”の状態になる可能性が高まるのだ。
振り返れば、1990年代のバブル崩壊時には、担保割れになった上に、リストラや倒産などで収入が激減し、ローン破綻に陥る人が続出した。バブル時には、住宅価格の上昇を前提に、50年ローンどころか100年ローンまで登場していた。
100年ローンも、なかなかローン残高は減らないけれど、資産価値が上がり続ける中で、5年後、10年後に売却すれば大きな利益が見込めるという発想だった。主に銀行ローンを借りにくい人を対象に融資を行う住宅金融専門会社が実施していた。
ところが、誰もが上がり続けると信じていた住宅価格は、バブルが弾けて一斉に暴落してしまったのは周知の通りだ。
そのため、ローン破綻などを原因とする自己破産件数は1980年代には年間1万人以下だったのが、1998年には10万人を超え、2003年には24万人台まで増えてしまった。そのうち2割から3割は住宅ローン破綻が原因だったと言われている。
その結果、債権を回収できなくなった住宅金融専門会社は全て経営破綻し、今は存在しない。まさにバブル崩壊時の悪夢だが、これからそんな時代が再来しないことを祈るばかりだ。