3 集団的自衛と集団的安全保障の差異
集団的自衛には仮想敵があるが、集団的安全保障では仮想敵はない。
NATO条約第5条では次のように規定されている。
「欧州または北米における1または2以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす」
「締約国は、武力攻撃が行われたときは、北大西洋地域の安全を回復しおよび維持するために必要と認める行動(兵力の使用を含む)を個別的におよび共同して直ちにとることにより、攻撃を受けた締約国を援助する」
このように、NATO加盟国は「兵力の使用」を含めた、武力攻撃を受けた同盟国に対する援助義務を負っている。
仮想敵を想定しない集団的安全保障は共通の敵と利益が不明確であり、加盟国間の深刻な国益対立に際して、加盟国間の意見がまとまらず、実効性が伴わない場合が多い。
例えば、国際連盟が第2次世界大戦の勃発を抑止できず、結局失敗したことが挙げられる。
4 日本はNATO加盟国になれるか?
NATO型の集団的自衛体制に加盟するには、日本自らが、世界標準の全面的な集団的自衛権の行使が加盟国の義務として求められる。
現憲法の枠内での限定的な集団的自衛権行使以上の、全面的な集団的自衛権行使のためには、改憲、特に第9条2項の削除と専守防衛を否定することは避けられない。
日本自らの戦後体制の抜本改革なしに加盟できない。
ただし、宇宙、サイバー、電磁波など、グローバルに影響する新領域や、対テロ・防諜、防衛装備の共同開発などのグローバルな安全保障上の課題については、パートナーとしてのNATOへの協力には価値がある。
このような面でグローバルな安全保障面での協力を今後も推進することは望ましいが、そのことはアジア版NATOを必ずしも意味しない。
現行のグローバル・パートナーとしてのNATOあるいは他のアジア諸国との防衛協力強化の枠内でも可能である。