訴えられても「有利な裁判」が可能な規約変更?
今回離脱を表明した著名人の中で、Xに対する具体的な危機感を示したのが米人気司会者のドン・レモン氏だ。レモン氏は13日、Instagram(インスタグラム)での投稿で、11月15日付で発効されたXの「利用規約とサービスの変更」を自身のX離脱要因として強調した。
この規約には、ユーザーとXの間で生じる紛争が、Xが本拠地をおく米テキサス州の州法に準拠するとされている。
以下は、Xの日本語版サービス規約からの抜粋だ。
「お客様と当社の間で別途合意があった場合でも、本規約およびお客様と当社の間で生じるあらゆる紛争には、法の選択規定を除くテキサス州の法律が適用されます。本規約または本サービスに関連するすべての紛争(略)は米国テキサス州北部地区連邦地方裁判所または米国テキサス州タラント郡に所在する州裁判所にのみ提起されるものとし、お客様はこれらの法廷における対人管轄権に同意し、不便な法廷に関する異議を放棄するものとします」
「また、法律で許容される範囲において、ユーザーは集団訴訟、集団行動、または代表訴訟に原告またはクラスメンバーとして参加する権利を放棄するものとします」
米ワシントン・ポスト紙は11月10日、これは今後Xに対して起こり得る訴訟が「保守派の拠点」である裁判所で審理されるようにする試みだと報じている。訴訟に対する防衛策であると同時に、Xに対して批判的な勢力への対抗措置でもあるという。
法学の専門家は、Xにとって有利な判決が得られるであろう裁判所を特定する行為だと批判している*2。
*2:For legal disputes, Elon Musk’s X picked a venue far from Texas HQ(The Washington Post)
その上、前稿で述べた通り、テキサス州の司法長官は保守派の共和党支持者であり、次期政権においてマスク氏のボスとなるトランプ氏の「オトモダチ」でもある。
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この規約変更が、どの程度日本のユーザーに浸透しているかは不明である。マスク氏は欧米で「言論の自由の絶対主義者」を標榜し、ヘイトやフェイクを取り締まるどころか、自ら拡散してもいる。今回の変更により、今後日本でもX上のヘイトや誹謗中傷などが、さらに野放しにされる可能性が全くないと言えるのだろうか。