かつて民主的なツール、いまや憎悪を煽る「おもちゃ」か
デジタルメディアを専門とする英シティ大のバックリー博士は英スカイニュースの取材に対し、Facebookなどに比べ利用者は少ないものの、「Xの使用者は政界や多くの業界を動かし、また揺さぶる存在」であると指摘している。リベラル派の離脱でXでは政治的議論が減少し、Xがさらに「右派のエコーチェンバー」に変容するだろうという。
Blueskyなどへのエクソダスが伝えられる一方で、Xは近年、特に共和党支持者など右派のユーザーの投稿がバズるプラットフォームだという。今回、リベラル系のガーディアンがXから撤退したように、今後、民主党支持者などリベラル派のX離れが加速すると、Xはさらに右傾化し、社会における政治的分断が進むことも懸念されている。
また、Blueskyにはリベラル派の新たなプラットフォームとしての期待が高まるが、Xに代わる存在になり得るかは今後現在の波に乗り、どの程度ユーザー数を拡大できるかにもかかっているという。
かつて「アラブの春」に象徴されたように、SNSは人々が圧政に対抗する民主的なツールとしての力を発揮したこともある。その代表格であったXは、今や富豪が好き放題に政治を動かし、憎悪を煽る「おもちゃ」に成り果てた感は否めない。
楠 佳那子(くすのき・かなこ)
フリー・テレビディレクター。東京出身、旧西ベルリン育ち。いまだに東西国境検問所「チェックポイント・チャーリー」での車両検査の記憶が残る。国際基督教大学在学中より米CNN東京支局でのインターンを経て、テレビ制作の現場に携わる。国際映像通信社・英WTN、米ABCニュース東京支局員、英国放送協会・BBC東京支局プロデューサーなどを経て、英シェフィールド大学・大学院新聞ジャーナリズム学科修了後の2006年からテレビ東京・ロンドン支局ディレクター兼レポーターとして、主に「ワールドビジネスサテライト」の企画を欧州地域などで担当。2013年からフリーに。