米国への初の公式訪問時に贈ったプレゼントは

 では、歴史上初となるアメリカへの公式訪問時、幕府は「外交贈答品」としてどのような品を用意したのでしょうか。

 実はこの秋、私は「万延元年遣米使節子孫の会」のメンバーとともに、万延元年遣米使節が持参した贈答品の中の現物を間近で見ることができました。それが「富士飛鶴図(ふじひかくず)」という掛け軸です。

1860年に遣米使節が訪米したとき、アメリカ大統領への贈答品として持参した掛け軸「富士飛鶴図」/静岡県富士山世界遺産センター所蔵
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 雪化粧した富士山を背景に、大きな羽を広げて美しく舞う鶴たち。手前には景勝「三保の松原」が描かれ、まさに、日本を象徴する崇高でめでたい題材が絶妙の配置で盛り込まれています。

 作者は狩野派の絵師で、江戸城本丸・西の丸の障壁画制作などにも参加した狩野董川中信(かのうとうせんなかのぶ)。その絵の素晴らしさは言うまでもありませんが、表装の裂地には金糸などが織り込まれた「金襴」と呼ばれる豪華な織物が使われ、軸先には打ち出の小槌などの繊細な蒔絵が施されており、その格式の高さには思わずため息が出るほどでした。

ワシントンのウィラードホテル応接室で、米国人が贈答品の撮影及び写生をする様子。手前に見える箱の中に10幅の掛け軸(巻物)らしきものが確認できる(万延元年遣米使節圖録より)
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