中国にあしらわれた公明党・山口代表と二階俊博さん

 最後に、どうしても「思い出せ」シリーズになってしまうんですが、ご退任前の公明党元代表・山口那津男さんが訪中するも、常務委員の蔡奇さんとしか面談できず、また今年最後の現役訪中となった二階俊博さんも、共産党政治局員兼外相の王毅さんレベルしか出てきてくれませんでした。

 まあ、表敬的に出てくるカウンターパートとしてはその辺だろうという「あしらわれ方」をしているのは、中国をよくご存じの各氏がご指摘の通りです。これは、公明党や二階俊博さんがその程度だという話ではなく、中国にとって、これが日本の重要度だと教えてくれているものに過ぎません。

 ところが、バイデン政権の大統領補佐官(国家安全保障担当)であるジェイク・サリバンさんとは、国家主席である習近平さんはちゃんと面談しとるわけですよ。これが、東アジアの安全保障における日本のあり方を示していると思うんですよね。

習国家主席、サリバン米大統領補佐官と会談、関係の安定と好転を希望(JETRO)

 トランプ時代の石破政権の目標としては、別に長島昭久さんが訪中したら習近平さんが出てくるレベルまでは求めないまでも、重要な課題において習近平さんと石破茂さんとの間で共通の問題を議論できるホットラインを用意する、最低限のテタテ(通訳のみの一対一の会議)が可能なレベルまで日本の国威を高揚させるといったことになるのではないでしょうか。

 そのためにも、あらゆる事態をきちんと想定した準備を政策面でも実務面でも行えるよう手当てを計画的に、着実に進めていく必要があります。他方で、のんびり有識者会議の結果を待ったり、NTT法改正が潰れそうなので防衛増税は難しいというネタで立ち往生したりしている暇はないんじゃないのかなあと感じずにはいられません。

 トランプ大統領が就任した暁には、日本も根性入れてこの方面の議論を推進しておく必要があるんだってことでしょう。なんか夏休みの宿題を秋ごろに始めるような辛さもあるんですが、やらないよりは、ちゃんとやったほうがいいのは間違いないので。

山本 一郎(やまもと・いちろう)
個人投資家、作家
1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し、『ネットビジネスの終わり(Voice select)』『情報革命バブルの崩壊 (文春新書)』『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』など著書多数。
Twitter:@Ichiro_leadoff
ネットビジネスの終わり』(Voice select)
情報革命バブルの崩壊』 (文春新書)
ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』(文藝春秋)