藤田菜七子の実力と功績
女性騎手にとってこうした厳しい時代の後に登場したのが藤田菜七子でした。
2016年のデビュー以来、2024年に引退するまで9年間にわたり毎年勝鞍を重ね、通算166勝、加えて公営地方競馬でも24勝という立派な成績を収めています。JRA女性騎手の年間最多勝や通算勝利数、G1レース初騎乗などの記録はすべて藤田が残したものです。
また、見逃されがちですが、この間、2度にわたりJRAから「年間フェアプレー賞」を受賞しているのは特筆に値します。
まだ27歳、ようやくジョッキーとして脂がのってきた時期でもあり、今年の7月にはJRA職員の男性との結婚が発表されたばかりでもあるし、気持ちを新たに女性騎手のリーダーとしてまだまだ活躍してほしかっただけに引退が残念です。
JRAにおける藤田の功績は、単に女性騎手として優れた成績を収めたということだけでなく、競馬ファンの枠を広げ、競馬場への間口をさらに広げてくれたことにもあります。現在、JRAに在籍している女性騎手で藤田の影響を受けていない人はいないでしょう。
今年4月13日に行なわれた福島競馬場第2レース(16頭立て)で、当時JRAに所属していた女性騎手7名のうち6名が騎乗、同一レース女性騎手最多騎乗となるレースがありました。6騎手は次のとおりです。
・藤田菜七子(デビュー8年目、当日26歳)
・永島まなみ(同3年目、21歳)
・古川奈穂(3年目、23歳)
・河原田菜々(2年目、19歳)
・小林美駒(2年目、19歳)
・大江原比呂(1年目、19歳)
同じ日、残りの女性騎手・今村聖奈(同3年目、20歳)は阪神競馬場で騎乗していたため、このレースには参戦できませんでした。
残念ながら、このレースでの女性陣の最先着は6着の小林にとどまりましたが、いつの日かレース結果が点灯される競馬場の掲示板(5着までが点灯)に女性騎手が上位を独占する日が来ることを想像してみるのも、今後の楽しみのひとつでしょう。