つまり、家族葬や直葬では、費用が出て行く一方であるのに対し、会葬者を集める一般葬は香典収入が見込め、コストが抑えられる傾向にある。

 葬式を華美な祭壇や演出にせず、一般会葬者を広く集めて香典を受け取り、地域の人や会社の同僚らに手伝いに来てもらった上で、レンタルスペース代がかからない菩提寺や自宅で葬式をやれば、場合によっては「黒字」になることも十分ある。

葬式費用を抑える5つのポイント

 ここで、葬式の費用を抑えるポイントを整理しておこう。

①地域住民や知人が参列できる一般葬にする
②祭壇などの設備面や、演出などを華美にしない
③ネットで安易に格安業者を選ばない(「安かろう悪かろう」も多い)
④故人の遺志を忠実に守ろうとしない(「散骨にしてほしい」などはコスト高になる可能性も)

このほか、やや非現実的ではあるが、葬式費用を抑えるにはこういう奥の手もある。
⑤遺体の輸送から葬式まで自前でやる

 そもそも葬式とは、共助の精神で成り立っている。費用・労力の両方の負担を、地縁血縁で補い合うのが、本来の葬式のあり方なのである。

 家族葬や直葬の場合、「死を知らされなかった」「葬式に呼ばれなかった」として、五月雨式に弔問客から連絡を受けるケースも少なくない。「価格表」だけで家族葬や直葬を選べば、かえって負担が大きくのしかかってしまいかねないのだ。

 安易に流行や低価格表示に飛びついてしまわないことが失敗を避ける秘訣である。さらに言えば、常に地域や親族と「死」の情報を共有し、いざという時には「困った時はお互い様」の精神で心をこめて故人を送ることが、大切になってくるだろう。

仏教の未来年表』(鵜飼秀徳著、PHP新書)