やっと俎上に乗った選択的夫婦別姓

 戦後最短、首相就任から8日後の衆院解散、そしてわずか26日後の投開票となった今回の衆院選。その投開票日のわずか1カ月に行われた自民党総裁戦において、選択的夫婦別姓が大きくクローズアップされていたことも大きかった。

 小西さん曰く、「自民党総裁選でここまで選択的夫婦別姓制度が語られるなんてすごいこと」。法制審議会が選択的夫婦別姓の導入を求める答申をしてから30年近く経つが、これまで部会などでしか語られてこなかったことが可視化され、オープンに議論されるようになった。これによって国民的な関心として俎上に乗ったという。

「小石河」連合と呼ばれた小泉進次郎、石破茂、河野太郎の各氏は自身が推進派であることを明確に示した。採決に際して党議拘束を外すとまで言い切った小泉氏は総裁選序盤で優勢とされ、世間の関心も集めた。

 そんな総裁選を大逆転で制した石破氏は、総理に就任して国会の代表質問に立つと一転、「国民の間に様々な意見があり、更なる検討をする必要がある」などと、これまでの総理をそのままなぞるような消極的答弁をし、物議を醸した。

 加えて総裁選中の姿勢を大きく転換して衆議院をあっという間に解散して総選挙に突入。政治とカネの問題の問題が、赤旗による「2000万円問題」スクープを経て再燃したこともあり、結果的に選択的夫婦別姓の問題は急にしぼんでしまった感は否めない。

 選択的夫婦別姓に対して最も強気だった小泉氏は、早々と選対委員長の座を辞し、去り際には「(選択的夫婦別姓問題について)党内で理解者が圧倒的かというと、むしろ半々かそれよりも少ない。壁は厚かった」と吐き捨てた。

 自民党大敗の結果を報じる新聞報道に目を通していたら、「政権が直面する主な政策課題」のリストの中に、「選択的夫婦別姓」の文字は見当たらなかった。政治改革の分野に「裏金問題の実態解明」とあるのは当然のこととして、外交分野に「米国の新大統領との信頼関係構築」とあるにもかかわらず、ジェンダー後進国の喫緊の課題であるはずの、そして経済界も含めて対策を求めているこの話題は見当たらない現実に、目の前がクラクラする。

 いい加減直面してくれないだろうか。この怒りの矛先を政治家に向けるべきなのか、政治と同じくらいマッチョな政治報道に向けるべきか、もはやよくわからないが、わーっと盛り上がり、だーっと盛り下がったこの問題。先行きは不透明だが、小西さんはそれでも、前向きに受け止めるという。