インフラ構築に国側の関与は?そしてユーザー負担はどうなる?

 今回の会見では、国側との連携についての見解は示されなかった。つまり、トヨタとNTTとしては当面の間、彼らが言う「仲間づくり」を進めることで、事実上の標準化であるデファクトスタンダードを目指すものだと考えられる。

 むろん、モビリティAI基盤は「交通事故ゼロ」だけが目的ではなく、クルマや道路側機器を介して社会における様々な分野でのデータ活用が盛んになることを大きな目標にしているはずだ。

 そうした場合も含めて、モビリティAI基盤実現に対してユーザーが負担するコストはどうなるのか気になるところだ。そのイメージについて、筆者は両社長に聞いた。
 

出所:トヨタ自動車
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 これについてトヨタの佐藤恒治社長は「モビリティAI基盤は、(社会における)基盤づくりであるので、それを利用者のコストに転嫁するという前提を置くべきではない」と基本的な姿勢を示した。その上で、企業としての収益性の確保について、車外とのデータ通信を生かすことで車を制御することで車載関連機器やソフトウエアのコストが下がる可能性や、各種データを使うことで新車開発期間の短縮などで開発投資を抑えられる可能性を指摘した。

 一方で、NTTの島田明社長は「投資に対するコスト回収は必要だ。ただし、長期的な(計画である)社会基盤なので、(ユーザーに)広く浅く負担していただくものになっていくと思う」と表現するにとどめた。

 はたして、クルマと社会の関係は今後、どのように変化していくのか。クルマのユーザーのみならず、それぞれの地域に暮らすすべての人の生活はどう変わるのか。トヨタとNTTが言う「仲間づくり」の行方を今後も追っていきたい。

桃田 健史(ももた・けんじ)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。
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