店舗から「AE86 BEV Concept」の試乗に出かける様子(写真:筆者撮影)

トヨタ自動車の往年の名車「AE86」がBEV(電気自動車)となり、期間限定でサブスク「KINTO」の都内店舗でレンタルが始まった。筆者はこの「AE86 BEV Concept」をこれまでも取材してきたが、実のところ事業性には懐疑的だった。だが、サービス開始を機に改めて取材し、「これは奥深い!」と当初の見方を撤回した。そのワケは。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 トヨタ車のサブスク(サブスクリプションモデル)事業を行うKINTO(キント)が、人気旧車「AE86」のBEV(電気自動車)の一般向けレンタルサービスを都内で始めた。
 
 この「AE86 BEV Concept」の初期版は、2023年1月の東京オートサロンで初出展されユーザーの間で「是非、試乗してみたい」という声がSNS上などで強まった。

 旧車に次世代パワーユニットを搭載するという試みに、往年のトヨタ車ファンから現代の若者までが大いに興味を持ったのだ。

取材に協力いただいた、トヨタモビリティ東京 新車企画室 GRガレージサポートグループ 担当課長の大野嘉明氏。今回の試乗プランは新たな顧客獲得の糸口になるとの見解を示した(写真:筆者撮影)

 トヨタとしては同モデルの公道試乗に向けてこれまで準備を進め、すでに事業化している旧車レンタルサービス「Vintage Club by KINTO」の期間限定プログラムとして組み入れた。

 サービス開始の様子を都内のトヨタ販売店で取材した。

 場所は、東京都江東区内のトヨタモビリティ東京・GR Garage東京深川。

 トヨタモビリティ東京では、Vintage Club by KINTOが事業として立ち上がった2022年からこれまで、三鷹および有明で「27レビン」や「70スープラ」などを導入した経験があり、今回は同社として3回目の実施となる。
 
 今回導入したモデルは、車両が単なるレストア車ではなく、最新のパワーユニットにコンバージョン(載せ替え)したこと。

 そのため、トヨタ側からは開発を担当するレクサスの電動化開発部署の関係者も参加し、レンタルするユーザーに対して、試乗前に開発の背景や狙いについて資料を基にしっかり伝えた上で、試乗後にユーザーからの感想や意見を聞き取りする体制を敷いている。レンタルの実施期間は、10月27日から12月20日の木曜日と金曜日に限定されている。

 車両は、BEVのほか、現行「GRヤリス」搭載エンジンからターボチャージャーを除いたG16EをAE86に搭載したモデルがある。

「AE86 BEV Concept」(手前) と、「AE86 G16E Concept」(奥)(写真:筆者撮影)

 どちらも費用は3時間で2万円だが、KINTOによれば抽選の倍率は10倍以上という狭き門だった。

 そうした中、幸運にも当選し今回の開催期間で最初に「AE86 BEV Concept」に試乗した方に話を聞いた。