電気自動車版「AE86」のスペックは?

 年齢は20代なのだが、なんと今年夏まで約5年間、80年代の「AE86」を個人で所有していたという。

 購入のきっかけは、子どもの頃に両親から観せられた漫画「イニシャルD」。主人公が乗るAE86に憧れ、大人になってからその夢を実現した。

試乗前、開発担当者からクルマの説明を受けるユーザー(写真:筆者撮影)

 応募の動機は「東京オートサロンの出展車を見て、クラッチやシフターがあるBEVという点に興味があったから」という。 

 試乗前、開発担当者から車両の詳しい説明を受けている間、さすがにクルマ好きで、かつ元AE86オーナーだけあって、新技術と旧車との関係性に対する理解度が高く、またシートに座った際の様子が実に落ち着いている雰囲気だった。

 店舗周辺を開発担当者が同乗して1周した後、ひとりで約3時間の旅に出かけていった。

 ではここで、改めて車両のスペックを紹介する。

「AE86 BEV Concept」車内の様子(写真:筆者撮影)

 ボディ寸法は、全長4200mm×全幅1625mm×全高1315mmで、車両重量は1070kg。

 モーターは北米向けのフルサイズのピックアップトラック「タンドラ」のハイブリッド車用で、そこに「GR86」の純正ミッション、ORC社製のクラッチ、クスコ社製のデファレンシャルギアなどを組み込んだ。

 バッテリーはレクサス「NX」のプラグインハイブリッド車向けを後席後ろのスペースに搭載する。

 サスペンションは、スプリングがHALスプリング社、またショックアブソーバーはエナペタル社が対応した。

「AE86 BEV Concept」車内後部に搭載する、レクサス「NX」のプラグインハイブリッド用の蓄電池(写真:筆者撮影)

 タイヤはブリヂストンPOTENZA RE71RS(185/60R14)で、ホイールはレーシングサービスワタナベ製だ。

 車内は、レーシングカーのようにロールゲージが張りめぐらされているほか、純正のインストルメントパネルを継承し、シートはBRIDE社、またハンドルはNARDI社製を採用して80年代当時のカスタマイズを再現している。

 トヨタによれば、AE86 BEV Conceptの発想は、電動化や知能化など自動車産業界が直面している大きな時代変化の中、トヨタとして「クルマ好きを誰ひとり置いていかない」という企業としてのメッセージを象徴する取り組みのひとつとして生まれたという。