本来は随意契約が望ましいが……

──競争入札の代わりに、随意契約にしてはどうかということも書いてありました。防衛装備品を随意契約で調達する際に、どのような点に注意すべきですか。

桜林:基本的には透明性を担保するため、国が調達するものには、ほとんどの場合、競争入札制度が導入されています。

 特定の防衛装備品だけ、なぜ特別扱いで随意契約にする必要があるのかという点をきちんと説明しなければ、国民は納得しないでしょう。

 また、随意契約になった場合、防衛装備品の中には半永久的に同じ企業が担当せざるを得ないものも出てくるでしょう。1社が独占している状態では、価格はその企業の言い値で決まっていると見られかねません。

 防衛装備品の多くは随意契約での調達がふさわしいと思いますが、なぜそうであるべきかという説明を丁寧に行い、防衛事業という特殊性をしっかり理解してもらう必要があります。

──自衛隊の防衛力強化及び防衛産業復興のため、今後さらに必要となること、あるいは重要となると思うにことついて教えてください。

桜林:今、まさに日本は装備移転を進めようとしているフェーズにあります。これは国主導でなければ絶対にできないことです。

 内閣総理大臣の鶴の一声のような指示や、新たな法律の制定ぐらいのことをしなければ誰も動けません。それをやらなければいけないということは、国は既に理解していると思います。

 しかし、その政策が国民に受け入れられるのかと聞かれると微妙なところです。現時点で、防衛産業と国民生活にはほとんど接点がありません。国民の理解を得るというところが、高い障壁になるのではないかと懸念しています。

 国民の理解を得るには、国のトップである内閣総理大臣が説得力のある言葉を自信を持って発していく必要があります。

 防衛省や防衛産業にかかわる民間企業にも、内閣総理大臣に現実の嘘偽りのない真実を知ってもらうよう、しっかりとした説明を粘り強く続けていくことが求められます。

関 瑶子(せき・ようこ)
早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了。素材メーカーの研究開発部門・営業企画部門、市場調査会社、外資系コンサルティング会社を経て独立。YouTubeチャンネル「著者が語る」の運営に参画中。