年末年始に向けて、税金の季節がやってくる。申告書類に疑義が生じた場合や、申告義務がありながらしていなかった納税者に対して、是正を求める「税務調査」は10~11月がピーク、12月は会社勤めの給与所得者の年末調整、年明けには所得税確定申告(2月16日~3月15日)の準備が必要になる。元東京国税局調査官で、たまらん坂税理士事務所(東京都国立市)の坂本新代表税理士に、税務調査のトレンドや確定申告での注意点を聞いた。前後編に分けて掲載する。
(種市 房子:ライター)
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税務調査の季節がやってきた
——今年も税務調査の季節が来ました。なぜ、税務調査はこの時期なのでしょうか。
坂本新氏(以下敬称略):税務調査は8月下旬に本格的に始まり、10~11月がピークで12月には終息します。国税庁では「1年度」は7月に始まり、6月に終わります。だから、税務署の職員の定期異動は年度初めの7月です。
3月までの所得税や消費税の確定申告、5月にピークを迎える法人税の確定申告への対応をしていると、4月の年度初め・大規模異動などとてもできないからです。7月の定期異動後、新旧部署での引継ぎや夏休みをはさんで、税務調査の繁忙期は8月下旬から、ということになります。
——12月には終わるのですか。
坂本:1月になると、今度は、所得税確定申告窓口に納税者が来るので、税務調査は落ち着いてきます。
——所得税の確定申告は毎年2月中旬からですよね。なぜ、1月に窓口に来る納税者がいるのですか?
坂本:確かに確定申告は毎年2月16日~3月15日です。しかし、公的年金や給与の源泉徴収票が1月中旬までに届くので、それを持って税務署に来て、医療費控除を申請する方は意外に多いのですよ。
医療費控除や住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)など、前年に払いすぎた税金を払い戻してもらう「還付」は2月16日より前でも受け付けているのです。手元資金を早く確保したい、確定申告開始日の2月16日以降は混雑する、時間があったから、といった理由でしょう。
——税務署はどのような体制を取るのですか。
坂本:私が東京国税庁管轄の税務署に勤めていたころは、1月15日ごろから実質的に窓口を設営して、早く来る方の還付申請を受け付けていました。国税当局としては、税納付の遅延には厳しい姿勢で臨みますが、早く来る分には文句のつけようがないですから。
——税金関連では、誰もが関わりたくないと思っているのが税務調査でしょう。税務調査について、今年の傾向を教えてください。