突然「税務署です」の電話がかかってきたら

坂本:周囲の税理士の話や私の肌感覚から言っても、今年は増えていると感じます。国税庁は毎年11月に、前年度の税務調査の統計を出します。先ほど言ったように国税庁の1年度は特殊なので、前年7月~その年の6月の税務調査の統計ということになります。

 直近の統計はまだ出ていないので、最新の統計は2022事務年度、つまり2022年7月~2023年6月のものとなります。個人を対象とした所得税に関する税務調査は、前年度比47%増の4万6360件、法人税では前年度比52%増の約6.2万件の実地の税務調査がありました。

 当時はコロナの5類移行により実地調査が大幅に伸びたので、前年度比が高く出ていますが、現在はさらに多くの実地調査が行われているのではないかと思います。コロナ前の2018事務年度(2018年7月~2019年6月)は、所得税の実地の税務調査は7万件以上もあったわけですから。

(写真:beauty_box/イメージマート)

——コロナを機に、税務調査のやり方も変化したのでしょうか。

坂本:変わりましたね。かつては、予告なしの税務調査もありましたが、コロナ後は、めっきり減りました。調査先に感染対策をしてもらう必要もあるのでしょう。

——税務調査は通告なしに踏み込むことができるのでしょうか。ドラマの一場面のようですが。

坂本:2011年税制改正で税務調査手続規程が改正され、「原則として」事前通知をすることとされました。事前通知では、開始日時、場所、調査対象の税目や期間などを伝えます。ただ、現金を頻繁に使う現金商売では、お金が動いた後ではたどりにくいので「無通告」で入ることも珍しくありませんでした。

——通告はどのように?

坂本:かつては、納税者自身の元にも電話が来ました。納税者への通知の後、事前に税務署に「税務代理権限証書」を届け出ている顧問税理士の元にも税務署から電話がありました。

 しかし、最近は、納税者の元には郵便で事前通知が来ることが多くなっています。納税者が、税務署に届け出た番号の携帯電話に出ないことや、電話に出ても「税務署です」と名乗られると、詐欺だと思って取り合わない事例が出ているからのようです。

 税務署には下4桁が「1111」の番号もあり、かえって、詐欺用に「いかにも役所っぽい」番号を見せかけているのでは、という疑念も抱かせてしまうようです。私たち税理士は、税務署の電話番号を登録しているので、着信番号を見て「税務署だ」と分かるのですが。だから、税理士には今まで通り、電話で事前通知が来ています。

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