都市伝説に惑わされると危険(写真:ideyuu1244/イメージマート)

年末年始に向けて、税金の季節がやってくる。申告書類に疑義が生じた場合や、申告義務がありながらしていなかった納税者に対して、是正を求める「税務調査」は10~11月がピーク、12月は会社勤めの給与所得者の年末調整、年明けには所得税確定申告(2月16日~3月15日)の準備が必要になる。元東京国税局調査官で、たまらん坂税理士事務所(東京都国立市)の坂本新代表税理士に、税務調査のトレンドや確定申告での注意点を聞いた。前後編に分けて掲載する。

(種市 房子:ライター)

>>【前編】税務調査が増えている!?現地に踏み込む「実地調査」、納税者への事前通知はどうやってくる?

——税務調査が終われば、確定申告の季節を迎えます。

坂本:所得税の確定申告は、フリーランスや、給与などの年収が2000万円超の人、副業収入が年間20万円超といった人、医療費控除、住宅ローン減税の初年度、ふるさと納税で特定の条件に該当する人など、幅広い層が対象となります。

 この「幅広い層」の中では、顧問税理士に依頼している人、自身で税金の正しい知識を得ている人から、節税策には興味があるけれども間違った知識を得ている人、税金にはまったく興味がなく、間違った認識を持っている人まで、グラデーションがあります。

坂本 新(さかもと・しん)たまらん坂税理士法人代表社員・日本暗号資産ビジネス協会準会員1991年、東京国税局に入局。2010~11年法務省大臣官房租税訟務課出向。2017年7月、50歳となったことを契機に暗号資産を得意とする税理士になるため東京国税局を離職。同年から暗号資産ホルダーに対し、暗号資産の税金説明会を開くなど活動をする一方、東京都国立市に「たまらん坂税理士法人」を設立。代表社員に就任。税理士向けの研修講師、個人・法人のクライアントサービス、暗号資産の税務調査等幅広く活動している。
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——間違った認識とはどのようなものでしょうか。

坂本:多いのは、「税務署窓口で確定申告をして、書類を受理してもらえば、申告内容についてもお墨付きをもらえた」という認識です。

 税務署は、必要な書類が揃っているかを確認するだけです。最近は給与所得や公的年金などの源泉徴収票の添付も不要になりました。フリーランスや副業の所得税申告では、確定申告用紙と、青色申告や白色申告の必要書類が添付されていれば受理されます。中身までチェックして、お墨付きを与えるようなことはありません。

 最近では、国税当局は、窓口に直接来ないでe-Taxで納税するように誘導もしています。税務署窓口で対応してほしいと思っていても、LINEなどで発行される入場整理券がないと会場に入れません。国税庁は「作成済みの書類提出のみならば整理券は不要」とアナウンスしていますが、混雑時には提出だけでも列に並ぶことが必要でしょう。

——国税庁や税理士事務所のHPを見ても「税務署で確定申告をすれば、内容の正否まで確認してくれる」とは書いていないのに、信じられているという意味では都市伝説と言えそうです。ただ、各税務署では、確定申告の「相談」は受け付けていますよね。

坂本:書類の書き方が分からない納税者向けに、LINEなどの予約制で税務署が相談に乗っています。ただ、この場合も、間違った認識を持っている方がいます。

——今度はどのような都市伝説でしょうか。