「バレないだろう」は、ほぼバレる
坂本:納税者は「バレないだろう」と確定申告していなくても、事業者から直接税務署へ送付される支払調書は暗号資産のデリバティブ以外にも60以上あるのです。たとえば、金融機関からは、預金利子、投信の利子・譲渡損益に関する支払調書が税務署に届きます。各税務署には、そうした支払調書を集めて名寄せしているだけの部署があります。
通知から、各納税者の資産残高や譲渡損益、取引実態を把握して、おかしなところがあれば、容赦なく税務調査や問い合わせがあります。世界的なインフレで投資対象として人気が高まっている金(ゴールド)でも、こうしたリスクがあります。
——どのようなリスクでしょうか。
坂本:金の延べ棒を売却して、売却益を申告しなかった場合、無申告加算税などが課されるリスクがあります。たとえば、親からの相続時は、相続財産の評価額が基礎控除(3000万円+600万円×相続人数)以下だったために、金の延べ棒に相続税がかからなかった場合には要注意です。
「自分が金の延べ棒を持っていることなど国税当局は知らないだろう」と高をくくって売却すると大変な目に遭います。金の延べ棒を買い取った貴金属取引業者は「金地金等の譲渡の対価の支払調書」を国税当局に提出しています。
調書では、誰と誰の間で、どのぐらいの量をいくらで売買したのかが分かります。この支払調書は、金の延べ棒に限らず、メープル金貨やプラチナのアクセサリーの個人売買でも届け出があります。手元にある一定額(現在は30万円)以上の金やプラチナのアクセサリーを売却して、譲渡益が出たら、確定申告が必要です。
>>【前編】税務調査が増えている!?現地に踏み込む「実地調査」、納税者への事前通知はどうやってくる?