(文星芸術大学非常勤講師:石川 展光)
死ぬとある地点からやり直せる転生ものの名作
今秋放映のアニメは、75本にのぼる。全作を観るとおよそ450時間かかることになる(※一話30分、ワンクール12話だと仮定した場合)。これは年間ではなく、ワンクールの数字だということである。
10月からTOKYO MXほかで放送を開始した『Re:ゼロから始める異世界生活 3rd Season』(以下『Re:ゼロ』)はそんなアニメ戦国時代においては名作に類する1本である。原作は長月達平のライトノベルで、マツセダイチ、楓月誠らによってコミカライズされている。アニメ製作はWHITE FOX。
アニメは第1期が2016年、第2期が2020年に放送されており、4年越しとなるファン待望の新シリーズだ。声優陣は小林裕介、子安武人、松岡禎丞、江口拓也などなど、
原作はいわゆる「なろう系」の代表的なライトノベルとして名高い作品である(ちなみに原作はまだ全然終わる気配がない様子)。「なろう系」とは、無料web小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿されるライトノベルの系譜のことで、俗にいう「異世界転生モノ」の作品のほとんどがこれに属するものだと言っていい。
主人公は至極フツーの高校生か、あるいはニートであることが多く、第1話の冒頭で何らかのアクシデントでいきなり死ぬ。そして現実世界ではない異世界に転生し、そこでご都合主義的な展開で大活躍したりしなかったりするという展開で、その裾野は深く広い。
こういう様式が出来上がってしまっているが故に、どの作品も非常に涙ぐましい創意工夫が凝らされている。転生したらスライムだったり、自動販売機だったりするものさえある。転生先の生活も様々である。
本作の主人公ナツキ・スバルも、過去世においてはご多聞に漏れずニートである。高校デビューに失敗し、学校に行けなくなってしまった人物だ。ジャージ上下のままコンビニに行った先で、何の前触れもなく異世界に転生する(どうも死んだわけではないらしい)。が、転生して数分たらずのうちに暴漢に襲われ、すごく簡単に死ぬのである。そして次の瞬間「セーブ地点に戻る」のだ。
当初スバルはそれに動揺するものの、自分の能力が、死ぬとある地点からやり直せる「死に戻り」であることに気づく。こうしてあらゆる人生の選択肢を試みては死んで戻る、ということを繰り返す。ご存知タイムリープものの典型で、「時をかける少女」などと同じである。