カラオケのマイクを握る夫・健治氏に寄り添う林眞須美死刑囚(C)2024digTV
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26年前の事件を追ったドキュメンタリー作品

 公開前から波紋を読んでいる映画『マミー』。

 先日、配給会社の東風は「このたび、本映画に登場する林眞須美さんのご親族から、本映画の公開に関連する誹謗中傷や嫌がらせを予想以上に受けており、日常生活が脅かされる不安が日に日に増しているとのご相談がありました。(略)公開の中止や延期はいたしませんので、ぜひ映画館のスクリーンでご覧ください。なお、本映画に関連する誹謗中傷や嫌がらせに対しては、法的措置を含め、厳正に対処します」と異例の声明を発表。

 一体、誰が何のために。

 本作に触れ、この事件がいかに誹謗中傷や嫌がらせで始まり、そしていまなお、誹謗中傷や嫌がらせの渦中にあるのか、思い知る。

 林眞須美は和歌山毒物カレー事件で死刑判決が確定した戦後日本で11人目の女性死刑囚。

 1998年(平成10年)7月25日、夏祭りで提供されたカレーに猛毒のヒ素が混入。67人がヒ素中毒を発症し、小学生を含む4人が死亡した。12月、和歌山県警は林眞須美を逮捕。1999年5月、初公判。林眞須美は過去の保険金詐欺は認めるものの、カレー事件をはじめとするヒ素関連事件については否認。二審からは無実を訴えた。

 2009年5月、最高裁で死刑が確定。林眞須美は現在も大阪拘置所に収容されている。

林眞須美死刑囚が収容されている大阪拘置所 ©2024digTV
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 林眞須美と聞いて、人はどんな様子を思い出すだろう。やはり、報道陣にホースで水を撒き、不気味な笑顔で挑発していた姿を思い出す人が多いだろう。

 でもそれ以前、彼らの家には集落に不似合いなほど多くの数のマスコミが押しかけ、24時間、監視、子どもたちさえ容赦無く撮影され、危険に晒されている異常な状況にあった。逮捕の瞬間は自宅上空に何台ものヘリコプターが旋回。あの家屋は落書きが絶えず、事件から2年後に放火で全焼している。熾烈な誹謗中傷、嫌がらせはあの頃から続く。

 けれど、映画は語る。彼女が犯人というにはあまりにも拙い証言と証拠しかないことを。

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