顧客にとっての「成功」とは何かを考えよ

 売上目標とは、会社からのブレークダウンであり、与えられたものである。そのため、「なぜこの目標なのか?」という主体的な問いも、主体的な理由もない。与えられた目標を実行するのみとなり、組織の考える力は落ちる。管理職の思考力低下は、顕著であり、与えられた目標を伝達し、実行を促すので、組織は活性化しない。また、自社中心思考に陥りやすく、顧客や市場環境の変化が見えなくなってしまう。

 内部でも、組織内の個人個人が見えなくなってしまい、営業担当者が顧客をどのように洞察しているのかが把握できなくなる。その結果、組織全体のモチベーションも落ちる。

 これを抜本的に改めることが必要であり、提案したいのは、売上目標ではなく「顧客の成功」を考えるということである。

 ソニーグループは「Purpose&Values」に基づき「感動体験で人の心を豊かにする」ことに軸足を移し、従来の販売台数目標を捨てた。

 この転換により、社内の風土も大きく転換していったという。より人に近づくことで、顧客とともに学ぶ組織へと変わっていったのだ。

 顧客の成功を実現するということは、顧客理解がなければできない。何が顧客の理想状態なのか、それを知らなければならない。そのためには、「顧客理解ができていない」こと自体を直視しなければならない。

 顧客や市場の変化を捉えた上で、何が顧客の理想状態かを理解し、その実現、顧客の成功に向けて全社横断で取り組むところから、すべては始まる。 

売上目標を捨てよう』(青嶋 稔、インターナショナル新書)