- なぜ、企業は「売上目標」にとらわれるのか。計画には目標が必要だが、いまや売上目標が多くの企業で成長を妨げる弊害となっている。
- 売上目標は会社から与えられたもので、組織と従業員の思考能力を奪う。自己満足に陥りやすく、市場環境の変化への対応力も損なう。
- 連載4回目はサントリー。価格競争が激しいなか、価格訴求型から生活提案型のマーケティングにどのように転換したか。
(*)本稿は『売上目標を捨てよう』(青嶋 稔、インターナショナル新書) の一部を抜粋・再編集したものです。
【連載:売上目標を捨てよう】
◎ソニーグループはなぜ、プレステ事業で「遊んだ回数」を重視するのか?販売目標で見失う事業の本質
◎リコージャパン、受注率を飛躍的に高めた「カスタマージャーニー」はどう作った?
◎日立製作所が進める「マスカスタマイゼーション」、特定顧客向けのソリューション事業から脱却した方法は?
◎サントリーはどうやって安売り競争から抜け出した?小売りと組みAI・データ活用、生活提案型マーケティングへ
サントリーは、サントリーホールディングス傘下の酒類製造販売会社だ。ビール、ウイスキー、チューハイ、ジン、ワインなどの生産から、マーケティングおよび販売までを一貫して行っている。
同社はかねてより、流通及び消費者の価格に関する感度の高まりを把握していたが、それに対応するだけでは業界全体の発展に繫がらないと考えていた。たとえよい商品を先行して出しても、すぐに類似製品が発売されて同質化競争に陥ってしまうからだ。
そこから脱するため、商品だけでなく生活提案も顧客に届ける必要があると考えた同社は、営業組織の在り方を大きく変革。消費者を主語にしたマーケティング・営業活動を行うことを決めた。
まず2016年から、サントリー(当時の社名はサントリー酒類)にて改革プロジェクトを開始した。当初は8人でスタートしたという。主役である消費者に対して“適切な”タイミングで、“適切な”売り場で、“適切な”商品を、“適切な”価格で提供し、需要の活性化を行う方法の提案を行った。また、買い物をする消費者の気持ちや動きを理解し適時適切な仕掛けを行うショッパーマーケティングと呼ばれる手法を推進した。