流通業界と消費者、双方に精通し、価値づくりのできる組織へ

 サントリーの実例は、多くの示唆に富んでいる。商品の直販を行っているメーカーもあるが、多くの場合、流通を経由する量のほうが圧倒的に多い。消費者はネットメディアなどで情報収集し、影響を受けた状態で店頭に行く。もちろん商品パッケージが消費者に及ぼす影響も大きいが、店頭でいかに買いやすい状態になっているか、消費者の嗜好に訴求する売り場が作られているかがポイントになる。

 こうした活動は、対象となる顧客を選ぶことにもつながる。商品の作り手は、価格ではなく、消費者の変化に応じた訴求ができる流通企業をパートナーとして選んでいくべきだ。そうしないと、常に価格訴求だけに走る御用聞き営業からは抜けられず、自社の営業部隊も成長しない。

 デジタル技術により、以前よりもかなりの精度で顧客理解を高めることができるようになった。マーケティング部門も積極的にデジタル技術を駆使し、顧客の理解を深めることで、顧客とともに価値を創造できる体制へと転換できるはずだ。

売上目標を捨てよう』(青嶋 稔、インターナショナル新書)