データを活用し、流通業界の生活提案を支援

 最初に対象としたのは主要な流通企業などだ。当時はドラッグストアの台頭などにより厳しい競争環境にあり、流通業界は特に強い危機感と変革意識を持っていた。同社はまず流通業界を中心に、消費者のデータを活用し食卓に関する生活提案を行う施策を提案し、徐々にだが受け入れてもらえるようになった。

 その後、社内に営業推進本部リテールAI推進チームを立ち上げ、データを用いた流通業界への提案を展開していった。

 現在、リテールAI推進チームは、サントリーの広域営業本部と営業推進本部の下に設置され、広域営業本部が流通企業と協働して消費者への提案を行っている。食品スーパー、ドラッグストア、コンビニエンスストア、総合スーパーなどの各業態に対して、それぞれの強み弱みを押さえ、如何に強みを引き出した形でより消費者に訴求できるかを提案している。

出所:『売上目標を捨てよう』(青嶋 稔、インターナショナル新書)
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 これは顧客の買い物体験の向上を実現し、ファンを増やしていくのが狙いだ。こうした活動によって、在庫の適正化やオペレーションの省力化により、コストダウンも可能になる。これらを実現するためには、メーカーと流通業界との間をシームレスにつなげたデータ分析が必須であり、顧客の購買行動などの可視化などのために、AIやデジタルツールが活用されている(図表21)。