知らぬ間に自宅マンションが他人名義に

「裁判闘争資金の5億円を調達するための話し合いは、大抵、Nが定宿にしていた『銀座グランドホテル』で行われました。当初、伊勢さんは妻名義になっている六本木の自宅マンションを売却し、5億円を捻出しようと考えていた。しかし、Nが『私が良い相手を探してくる。売却しなくてもいいようにする』と請け合いました」

 しかし、突然、伊勢元会長の与り知らないところで、六本木のマンションは人手に渡ってしまった。今年3月1日、「譲渡担保」を理由に、東京・立川市にある北系のパチンコ会社に名義変更されてしまったのだ。

「3月1日の当日、Nの関係者が、イセ食品が拠点を置いた富山・高岡市に住む伊勢さんの妻のもとを訪ねていました。妻は伊勢さんの一つ年下の94歳。そこで、妻はパチンコ会社から5億円を借り入れる契約書にサインさせられたのです。金利は上限金利の年15%で、返済期限は1年後というものでした。

 その2週間後、顧問弁護士から『Nがマンションの所有権を移転した』との電話を受け、伊勢さんは、その事実を初めて知りました。面識のまったくないパチンコ会社にマンションを取られ、借り入れたはずの5億円は手元に届いていなかった。

 すぐさま、Nに連絡を取ると、『知らなかった。なんとかする』との返事でした。しかし、その後、『母親が病気なので、鹿児島に帰省しなければならない』と言い訳し、しばらく音信不通に。なおも、伊勢さんが『損害賠償請求訴訟を起こす』と詰め寄ると、『5月31日までに全額返済するし、マンションも戻るようにする』と弁解していました」