しかし、その裏では巧妙な仕掛けが施されていた。

「伊勢さんの妻は、Nの推薦した弁護士と委任契約を結ばされていました。妻は2月28日付でその弁護士宛ての、“支払指図書”なるものにサインをさせられていた。その内容は、パチンコ会社から5億円が弁護士の口座に入金されたら、700万円余りの弁護士報酬などを差し引いてから、P社なる会社への振り込みを依頼するというものでした。名目は、そのP社が手がけているとされる発電機事業への投資資金です。

 P社会長の肩書きを持つのがNでした。つまり、5億円はNの会社への投資に回したことにされた。詐欺ではないことの辻褄合わせが図られていたわけです」

警視庁に告訴状

 現在、伊勢元会長はパチンコ会社への月々600万円以上の利息の支払いに追われている。その支払いが続けられれば、六本木のマンションから追い出されることはないものの、来年2月には元本の5億円を返済しなければならない。

「伊勢さんは、もはや利息を工面するにも四苦八苦の状況です。5月31日までに全額を返済するはずのNはすでに行方をくらまし、一切、連絡が取れなくなっている。ここに来て、Nを詐欺での刑事告訴に踏み切ることにしました。直接の告訴人は伊勢さんの妻で、10月初め、警視庁の捜査2課に告訴状を持ち込んだところです」

 卒寿を越えた老夫婦を手玉に取った”詐欺師”。手が後ろに回るのは時間の問題か。