本物の人脈

「Nは伊勢さんに、モンゴルで手掛けている金融決済事業で年間3200億円の売り上げが見込めるから、20%の出資をしてくれたら年間32億円を提供できるとか、台湾で水蒸気発電事業を展開したら3000億円の売り上げが実現可能なので、30%の出資で233億円を提供するなどと持ちかけてきました。

 さらに、昨年の12月下旬、Nは伊勢さんをモンゴルに連れ出し、ウランバートル郊外の養鶏場などを視察している。そこで、Nは伊勢さんに、“この養鶏場の経営に携わって、イセブランドを復活させたらどうか”と提案した。

 しかし、伊勢さんは裁判のことがまずは第一なので、この出資話には首を縦に振りませんでした。モンゴルからの帰国後、伊勢さんは在日モンゴル大使館のイベントにも招待された。後々、伊勢さんの持っている名刺を確認したところ、Nから、オフィナー・フレルスフ大統領の補佐官、外務副大臣、バンズラグチ・バヤルサイハン駐日大使らを引き合わされていました」

 結論から言えば、Nのモンゴル人脈は本物だった。これが、伊勢元会長がNを信用する最大の理由になったのは間違いない。

 しかし後になってみれば、それは伊勢元会長の運命をさらに暗転させる「舞台装置」でもあった。