2軍監督からの昇格が多いなか、藤川氏はコーチ経験もなし 

 YouTubeでは巨人や米大リーグで活躍した上原浩治氏、巨人時代に対戦もした清原和博氏らとのコラボ企画などを楽しみ、Xでは自身の番組出演なども告知した。告知したスポーツ番組などでの解説の評価も、藤川氏の監督待望論の呼び水となった要因の一つといえる。

 一方、岡田氏のように2軍監督からの昇格は、現在にまで続く理想的な1軍監督のルートにもなっている。今季のセ、パ両リーグの優勝チームは、巨人の阿部慎之助監督、ソフトバンクの小久保裕紀監督ともに2軍監督の経験者。昨季までパで3連覇したオリックスの中嶋聡監督、2021年からセで2連覇したヤクルトの高津臣吾監督も2軍監督を経て、1軍の指揮官となった。

 来季から西武で指揮を執る西口文也氏も2軍監督からの昇格だ。2軍で采配を振るう経験を積んだ上で、自らが1軍監督となる数年先を見越して、成長が見込まれる選手らを強化できることは利点だろう。

 岡田氏が2005年に阪神をリーグ優勝に導いた際は、03年に星野政権下で18年ぶりのリーグ優勝に貢献した金本知憲、矢野燿大、下柳剛の3氏のような他球団から移籍してきた戦力を頼りつつも、2軍で育てた選手らを積極的に起用した。ファーム組織の重要性を熟知するからこそ、1軍の監督になってからも、時間があるときには2軍戦に足を運び、若い選手らの現状を自らの目で確かめてきた。

 これまでも、ごく一部の大物選手の場合に限っては、コーチ経験を経ずに即監督というルートがあったものの、評論家や解説者として野球の現場と密につながっているケースがほとんどだった。

 藤川氏や、今回の後任候補に名前が挙がった一人である鳥谷敬氏は、引退後に指導者の道には進まず、野球解説者の仕事を担いながらタレント的な仕事も含めて活動の場を広げてきた。他球団でも、元巨人の上原浩治氏や元ロッテの里崎智也氏らが、YouTubeでファンの支持を集め、SNSで自らの言葉で積極的に情報発信する。

 筆者も、現役時代にチームの柱として活躍した実績がある40代の元選手らと話すと、彼らの中には、監督や編成トップのゼネラルマネジャー(GM)には高い関心を示すものの、コーチ業からのスタートには消極的なことが多い。