3日、阪神・岡田監督が今季いっぱいで退任することが一斉に報じられた(写真:共同通信社)

(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)

 プロ野球、阪神の岡田彰布監督の今季限りでの退任が決まったとの報道がシーズン終了を待たずに飛びだした。スポーツ報知が3日付紙面でスクープすると、スポーツ紙各社に加え、NHKや朝日新聞などの一般紙や通信社もすぐさま“後追い”した。

 すでに後任候補にOBの藤川球児氏の名前も堂々と報じられる。一方で、3日夜にレギュラーシーズン最終戦を終えた指揮官は取材に応じずに帰途へ。チームは球団初の日本一連覇に向け、12日からクライマックスシリーズ(CS)第1ステージに臨む。

 大事な時期の退任報道はチームに悪影響はないのか。在阪メディアの“ストーブリーグ”に関する速報スクープは、時代のニーズに合っているのか。冷ややかな反応も飛び交う。

 岡田氏は阪神の監督として通算522勝は歴代最多。1985年に選手として、そして昨季は監督として球団史上2度しかない日本一をいずれも経験した。阪神の歴代指揮官の大半が成績不振による事実上の解任となる中で、岡田監督は文字通りの勇退になるだろう。

阪神・岡田監督の退任を報じるスポーツ紙(写真:筆者)

 退任報道は4日、東京で販売されるスポーツ各紙でも大きく扱われた。日刊スポーツとデイリースポーツがそれぞれ1面で報じ、3日付の最終版1面でスクープしたスポーツ報知も終面で「最終戦飾った!!ファンから『ありがとう』」などの見出しとともに掲載した。

 スポーツニッポン、サンケイスポーツも大きく取り上げ、一般紙も朝日、読売、毎日、産経、日経全紙が退任を報じ、阪神の「全国区」の人気の高さを示した。テレビでもNHKは3日夜の「ニュースウオッチ9」で大々的に報じ、阪神戦のナレーションは惜別ムードを漂わせる内容だった。

 報道によれば、岡田監督はリーグ連覇の目標が途絶えた9月28日の試合後、杉山健博オーナー、粟井一夫球団社長と会談の場を持ち、2年契約満了となる今季限りでの退任が決まったという。各メディアが球団関係者に取材をしている点からも、事実を疑う余地はないだろう。

 一方で、忘れてはならないのは、阪神のシーズンはまだ終わっていないという点である。巨人にリーグ連覇を阻まれたとはいえ、CSを勝ち抜けば、球団初の日本一連覇の可能性がある。

 それゆえに、岡田監督は退任を報じられた3日夜の試合後、メディアの前で言葉を発することはなく、取材に応じた粟井球団社長も「われわれは現在戦っている。現時点では大変申し訳ないが、コメントすることはございません。本当にCS、日本シリーズを勝ちたいので。しかるべき時期がきたら公表したい」などと言葉を選んだ。