「第1次政権」の苦い思い出

 いずれにしろ、読者のニーズという観点で言えば、岡田監督の退任は、ファンにとって大きな関心事である一方、日本一連覇への期待値はそれ以上に大きいはずである。

 苦い思い出は、岡田監督の第1次政権の終焉である。

 2008年シーズン、阪神は、巨人に最大13ゲームあった差を終盤にひっくり返されて2位に終わった。6年目の続投が内定していたにもかかわらず、岡田監督はV逸が決まった夜、コーチに辞任する意向を伝えた。

 レギュラーシーズン最終戦後に当時の球団社長と会談した指揮官は、慰留に翻意することはなかった。CS、勝ち進めば日本シリーズも指揮を執る予定だったが、チームは早々に敗退した。

 すでに後任候補も報じられる中で、チームは日本一へ、どう集中力を高めていくか。阪神が勝ち進めば、関西が盛り上がって新聞の売れ行きにも好影響を与える。フライングした先行報道の代償は果たして・・・。

田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。