株価バリュエーションへの影響
次は株価について考えてみよう。
今日の実質金利上昇は株価にとってどんな意味を持っていたのだろうか。これについては、「ごくわずかな意味しかない」というのが今のところの答えになる。
ノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラー氏が開発した景気循環調整後株価収益率(CAPEレシオ)を見ると、今日の米国ではシラー氏が用いている指標が両方とも過去最高値に近い水準にある。
また、CAPEレシオから導かれる景気循環調整後益回り(S&P500ベース)は2.8%にすぎない。
TIPSの利回りを1ポイント上回るだけだ。ほかの主要株式市場の値と比べても、これはかなり低い水準だ。
このデータは、今が「売り」だと叫んでいるように思える。
ただし、言うまでもないが、売られる展開にはなっていない。なぜ売られないのか。
結局のところ、今日の益回りは過去の平均値をほぼ60%下回っている。
ニューヨーク大学スターン・スクール(経営大学院)のアスワス・ダモダラン氏はこの疑問について、一つ考えられるのは「過去は重要ではない」ことだと明快に論じている。
確かに、過去に目を向けたバリュエーション指標が将来のリターンの予想にはあまり役に立たないという見方は正しい。
世界金融危機以降は特にそうだろう。
今後もそうであり続けるかどうかは知り得ないものの、ダモダラン氏が未来の企業業績の予測を重視して過去を捨て去った理由は理解しがたいものではない。
だが、その未来もかなり不確実だ。
市場を混乱させるほど大きなショックが、昨今のそれよりもはるかにひどいショックが訪れることは想像に難くない。