米資本主義は高い利益を稼ぎ続けるのか?

 現時点で分かっているのは、実質金利と景気循環調整後益回りとの差が非常に小さいことだ。

 したがって、現在の株価がすでにかなり割高であることを考えれば、米国株を所有することで将来見込まれるリターンが、株価再評価からもたらされることはなさそうだと言って差し支えないと思える。

 現在のバリュエーションでさえ、利益を稼ぐ力が極めて速いペースでかなり先まで伸び続けると考えなければ成り立たない。

 ひょっとしたら、既存の(あるいは今後登場する)独占事業体は今日の巨大テクノロジー企業(エヌビディアを含む)が享受してきたものと同じくらいの利益率を維持すると想定されているのかもしれない。

 本質的に言えばこの想定は、今日の米国資本主義は尋常でない利益を未来永劫計上できるとの見方に賭けているのと同じだ。

 そしてほかの市場の弱さは、正反対の結果になることへの賭けだ。

 もし投資家の見立てが正しいのであれば、昨今の実質金利の上昇など取るに足りないこととなる。

 要するに、投資家は「今回こそは本当に違う」という命題に賭けているのだ。

 筆者個人としては、この命題は受け入れがたい。

 しかしひょっとしたら、ネットワーク効果とか限界費用ゼロとかいうもののせいで利益は「天の恵み」に変わったのかもしれない。

 それを集められる企業が、多額の利益をいつまでも享受できるというわけだ。

 実質金利など一体誰が気にするものかと思われるだろうか。急激なインフレであったら話はまた別かもしれない。

By Martin Wolf
 
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