実質金利がさらに上昇すると考える理由

 実質金利がこれからさらに上昇すると考えられる理由はいくつかある。

 何と言っても、現在の水準はまだ全く高くない。財政は逼迫している(米国は特にそうだ)。エネルギー転換という投資需要もある。

 さらに、我々の社会は「高齢化社会」から「高齢社会」に移行している。

 今後は貯蓄が減少傾向をたどり、高所得国と中国で財政圧力を強めることが多くなるだろう。世界の混乱も防衛費の増加をもたらす。

 こうしたことから、実質金利が今後さらに上昇するとの見方には信憑性があることがうかがえる。

 同時に、高齢社会では耐久消費財と住宅への支出が減りがちになるだろうし、そうなれば投資需要も減少する。

 もっと言えば、経済協力開発機構(OECD)がその中間経済見通しで指摘しているように、世界経済の成長率が力強く上向くと広く予想されているわけではない。

 こうしたことをすべて考慮すると、実質金利が今後どうなるのか、どちらの方向に向かうのか、確かなことは言いにくい。

 それでも、財政赤字の拡大と債務の増大の結果としてインフレが戻ってきそうだと見る人がいるかもしれない。

 それは、中央銀行にはインフレ目標を達成する能力があるとの信頼が崩れ始めたら(あるいは崩れ始める時に)、名目金利の上昇という形で顕現することになるだろう。

 中央銀行は最近、物価上昇を抑え込んできた。だが、インフレ圧力はまたすぐにぶり返す恐れがある。